よくある症状

  • かゆみを伴うかさかさした赤い皮疹がでる
  • 幼少期より良くなったり悪くなったりを繰り返す
  • 冬に肌が乾燥しやすい
  • アレルギー体質である

アトピー性皮膚炎とは

幼少期より皮膚が乾燥しやすくアレルギー体質がある方で、かゆい皮疹を繰り返す疾患です。皮疹は幼少期に発症して成長とともに改善する傾向にありますが、大人になっても皮疹が持続したり、一旦良くなっていた皮疹がまた出てくる方もいます。

乳児期(2歳未満)には顔の赤みとかさかさから始まり、幼児期(2歳〜12歳)になるにつれて首や肘裏・膝裏にがさがさした皮疹がみられ、腹部には鳥肌様のプツプツした皮疹がみられます。思春期以降(13歳〜)は上半身に皮疹が目立つようになります。

また、アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下が大きく関与していると考えられています。皮膚のバリア機能とは、外部からの刺激や異物から体を守る働きを指します。正常な皮膚は、角質層と呼ばれる最外層が、セラミドやコレステロールなどの脂質で構成されたバリアを形成することで、外部からの刺激を遮断し、水分を保持する役割を担っています。

・バリア機能の低下とアトピー性皮膚炎の関係

アトピー性皮膚炎では、この角質層のバリア機能が低下していることが多く、以下の様なことが起こります。

セラミドなどの脂質の減少: セラミドは、角質層の細胞間を密着させて、バリアを形成する重要な役割を担っています。アトピー性皮膚炎では、セラミドの量が減少することで、皮膚の水分保持能力が低下し、乾燥しやすくなります。乾燥した状態は、外部刺激を受けやすく、炎症を悪化させる原因となります。

角質層の構造異常: アトピー性皮膚炎では、角質層の構造が乱れ、バリア機能が低下することがあります。正常な角質層は、規則正しい層状構造を形成していますが、アトピー性皮膚炎では、この構造が乱れてしまうため、バリア機能が低下し、外部からの刺激を遮断できなくなります。

免疫細胞の異常活性化: バリア機能が低下すると、外部からの刺激が皮膚内部に侵入しやすくなり、免疫細胞が過剰に反応して炎症を起こします。これがアトピー性皮膚炎の発症や悪化につながります。

・バリア機能の低下が招く症状

バリア機能の低下は、以下の様な症状を引き起こす可能性があります。

乾燥: 皮膚の水分保持能力が低下し、乾燥しやすくなります。

かゆみ: 乾燥や外部刺激によって、かゆみを感じやすくなります。

赤み: 炎症によって、皮膚が赤くなります。

湿疹: かゆみによって掻きむしってしまうことで、湿疹が生じます。

感染症: バリア機能が低下すると、細菌やウイルスなどの感染症にかかりやすくなります。

札幌市中央区の中央図書館前皮ふ科の治療について

以前であれば抗アレルギー剤の内服とステロイド外用剤が中心でした。いまでもこれらの重要性はかわりませんが、ステロイドではない外用剤としてタクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏、ジファミラスト軟膏などがあります。また、注射剤としてデュピルマブやネモリズマブ、トラロキヌマブが、内服剤としてバリシチニブ、ウバダシチニブなどが新しく登場しています。注射剤や内服剤の効果は高いといえますが、全てのアトピー性皮膚炎の方に使えるわけではなく、また薬剤も高額であることから診察のうえ使用を決めることになります。しかし、アトピー性皮膚炎の治療は近年確実に進歩しており、よりよい治療ができるような環境になってきています。

札幌市中央区の中央図書館前皮ふ科では、患者さまのお肌の状態を丁寧に診察し、最適な治療法をご提案できるよう努めています。ぜひ一度ご相談ください。

日常生活における注意点

アトピー性皮膚炎を改善するためには、バリア機能を回復させることが重要です。以下のことに気をつけましょう。

保湿: 乾燥はバリア機能を低下させる主な原因の一つです。保湿剤をこまめに塗布して、皮膚の水分を保持し、乾燥を防ぎましょう。

刺激の回避: 洗剤、化粧品、衣類などの刺激となる物質を避けるようにしましょう。

適切な洗顔: 乾燥や刺激の原因となるため、洗顔はぬるま湯で優しく行い、刺激の少ない洗顔料を選びましょう。

生活習慣の改善: 睡眠不足やストレスは、バリア機能を低下させる可能性があります。規則正しい生活を心がけ、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

Q&A

アトピー性皮膚炎と診断されました。一生治りませんか?

アトピー性皮膚炎の症状は幼少期より始まるのが一般的です。一度診断されると一生治らない?と思われるかもしれませんが、そうではありません。健診での年齢別の有症率を調べた結果、乳児で6~32%、幼児で5~27%、学童で5~15%、大学生で5~9%と年齢で差があり、成長するごとに低くなる傾向にあります。

つまり幼少期のころアトピーと診断されても、成長につれて症状がなくなる人が一定数いるということです。

これには、一つに年齢による肌状態の変化があります。乳幼児のときは乾燥肌でかさかさしていても、小学生くらいになってくると皮脂の分泌が増えて乾燥肌が改善し、アトピー性皮膚炎の症状が軽くなることがあります。

しかし、アトピー性皮膚炎は生まれ持っての肌質・体質が大きく影響するため、幼少期の症状が一旦良くなったあと、大人になり再燃する患者様がいることも事実です。これには住居環境や生活習慣などの要因も影響してきます。環境とは温度や湿度、アレルゲン(アレルギーの原因となるもの)が周囲に多いか少ないかなどです。

アトピー性皮膚炎はこのように多くの因子により症状が変化するため、「治る」というより「症状が落ち着いている状態」という表現が正しいといえます。この「症状が落ち着いている状態」にするために皮膚科での治療が必要であり、改善したあともそれを維持するための継続治療が重要になってくるのです。

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ステロイド外用剤は副作用が怖い?

ステロイド外用剤は怖いと思っていらっしゃる方も多いのではないのでしょうか。

ステロイド外用薬は使い方を間違えなければ副作用はあまり生じません。一方、ステロイド内服薬はある程度の量を継続して服用していると、何らかの副作用がでてきてしまうため、札幌市中央区の中央図書館前皮ふ科では、薬剤師の資格も持つ皮膚科専門医の院長のもとで副作用を管理しながら治療を行っていきます。

ステロイド外用剤のメリット・デメリットを天秤にかけると、圧倒的にメリットが大きいと考えられます。

特にアトピー性皮膚炎では、ステロイド外用剤を使わなければ十分な治療が行えません。

確かに現在はアトピー性皮膚炎に対して注射薬や内服などの新薬がでてきており、これらの治療効果はかなり高いといえます。しかし、それらの新薬は誰もが使えるというわけではなく、またステロイド外用薬を補助的に用いることも多いため、やはりステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎の治療において必要不可欠な薬といえます。

このことは、世界中で多くの皮膚科医がアトピー性皮膚炎を何十年も研究した結果、現在でもガイドラインで推奨されていることからも言えるのではないでしょうか。

これまでの説明から、「では逆にいえば、使い方を間違えること怖い薬ということでは?」とお思いになる方もいるかもしれません。

ステロイド外用剤の副作用としては強い薬を長期間(数ヶ月〜数年)使い続けると、「皮膚がうすくなる」「血管が目立つようになる」という副作用が生じます。これらは特に顔では顕著に生じるため、顔に強いステロイド外用剤を使うことはあまりありません。以前にこのことが問題になり、報道等で大きく取り上げられたため、ステロイド外用薬が怖い薬と印象付けられてしまった経緯もあります。

これらの副作用は薬を中止してから時間とともに改善していくことが分かっています。そのため、皮膚科の専門医が体の部位・症状にあった強さのステロイド外用剤を選んで処方すれば、安全な薬と言って良いと思われます。

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外用剤はいつまで続けるの?

アトピー性皮膚炎では程度の差はありますが、皮膚のかゆみや湿疹を繰り返してしまいます。そのため、「症状が落ち着いている状態」を保つために外用薬を塗り続けるということが重要になります。

特に、保湿剤は症状が落ち着いているときにもその状態を維持するために塗り続けることが望ましいとされています。

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外用剤はどれくらいの量を塗ればいいの?

外用剤の塗布量を規定するものに1FTU(Finger Tip Unit)という考えがあります。チューブの軟膏を出したとき、人差し指の先から第一関節までの長さまでの量(0.5g)で手のひら2枚分の面積を塗れるというものです。

その単位を用いて塗布量を表現すると、背中で7FTU(3.5g)、片腕で3FTU(1.5g)といった具合です。ちなみにローション剤では手の平に出した1円玉大が1FTU です。

しかし、実際には軟膏チューブによって口径が違うために同じ長さを出しても量が異なることがあります。また、毎回正確な量を測って塗布するのは手間がかかります。そのため、塗った後にテュッシュが張り付く程度の外用量を目安にするのが良いと思われます。

次に塗り方です。必要量の軟膏を一箇所の皮膚に置き、そこから塗り伸ばしている方が多いのではないでしょうか。これだと軟膏を置いた部位から遠くなるにつれて軟膏の量が少なくなってしまいます。軟膏を等間隔でチョンチョンと分けて置き、そこから一気に塗り拡げるのが塗りムラの少ない塗り方です。ぜひ試してみて下さい。

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生活で気をつけることはありますか?

生活で気をつけることの一つは入浴法です。まず、お風呂で石鹸を使う際、肌を絶対にこすってはいけないということです。そのため、基本的にスポンジやタオルは使用せず、素手で泡を体につけて洗うようにしましょう。

また、洗う回数にも注意が必要です。成人では入浴やシャワーで体を洗うのは1日1回が基本です。それ以外で汗をかいたときなどは、シャワーで汗を流す程度にとどめておきましょう。

一方、小児やご高齢の方では皮脂が少ないため、必ずしも毎日ボディソープを使う必要はありません。特に乾燥する冬などは2日に1回でも十分な方が多いと思われます。また、石鹸をつける部位も全身でなく、陰部や足などの汚れ易い部位を中心に洗うとよいでしょう。

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塗り薬以外の治療はありますか?

数年前までアトピー性皮膚炎の治療は、抗アレルギー剤の内服とステロイド外用剤(またはタクロリムス軟膏)がメインでした。しかし、最近ではこれまでと全く異なった治療法が登場してきています。

ひとつは「デュピクセント」という注射剤です。皮膚の炎症やかゆみが生じる機序を阻害するため、これまでの治療に比較して劇的な効果を発揮します。効果のある方であれば、注射翌日よりかゆみが著明に改善し、数週間から数ヶ月かけて皮膚の状態も改善していきます。

また、その他に「オルミエント錠」や「リンヴォック錠」などの新薬が新たに承認されています。薬の適応の可否や薬剤が高額であることなどから、すべての患者さんに当てはまる治療ではないものの、間違いなくアトピー性皮膚炎の治療法の選択肢は増えています。

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